建築学科の名門大学といえば、東京大学、東京科学大学(旧・東京工業大学)、早稲田大学、京都大学が代表格でしょう。
中でもこれらの大学は偏差値トップクラスであり、建築を志す学生の憧れの的となっています。
今回は、そんな建築学科の最難関4大学と、そこから輩出された著名な建築家・構造家をご紹介します。
東京大学 建築学科
建築学科の頂点に立つ東京大学。
卒業後は大手建設会社や官公庁、大学、設計事務所など幅広い進路が開けており、政財界や学界との強固なネットワークも魅力の一つです。
建築家としての人生を左右するようなクライアントとの出会いや人脈形成にも有利であり、まさに「建築で生きる」ための舞台が整っています。
また、プリツカー賞受賞者を最も多く輩出している大学でもあります。
意匠、構造、設備、都市計画、建築史など各分野に著名な教授陣がそろい、少人数制の教育で丁寧な指導が受けられます。
東京藝術大学や旧・東京工業大学(現・東京科学大学)との卒業設計講評会も開催されるなど、外部との連携や刺激も豊富です。
著名な出身建築家:丹下健三、前川國男、黒川紀章、槇文彦、磯崎新、隈研吾、伊東豊雄、藤本壮介、谷口吉生、小嶋一浩、青木淳、原広司 ほか
出身構造家:木村俊彦、川口衞、佐藤淳、嘉村武浩、向野聡彦
出身建築史家:藤森照信、伊東忠太、五十嵐太郎、鈴木博之、村松貞次郎
東京科学大学 建築学系(旧・東京工業大学)
2024年に東京医科歯科大学と統合し、東京科学大学となった旧・東京工業大学。
かつての「東工大建築学科」は現在も健在で、理系的視点に基づいた建築教育が特徴です。男女比はおよそ9:1。
教授陣には清家清、篠原一男、坂本一成、塚本由晴、安田幸一など、日本建築界を代表する名建築家が名を連ねます。
構造設計でも、基礎構造の第一人者・時松孝次教授や、安藤忠雄や原広司と組んできた金箱温春氏など、実務にも強い人材が指導に当たっています。
著名な出身建築家:清家清、篠原一男、坂本一成、西沢大良、塚本由晴、武井誠、藤村龍至、長谷川豪、長谷川逸子、谷口吉郎
出身構造家:金箱温春、吉江慶祐、村上博昭、谷川充丈、水谷太朗、高澤昌義、篠崎洋三
早稲田大学 建築学科
早稲田大学は自由で個性を重視した建築教育で知られます。
石山修武、古谷誠章、入江正之、吉村靖孝など多彩な教授陣が揃い、設計に重点を置いたカリキュラムが特徴です。
入試に空間表現試験があることからも、創造性を重視していることがわかります。
また、卒業設計では設計・構造・設備の学生がチームを組んで共同制作するなど、実務を意識した先進的な教育方針も注目されています。
基礎教養中心の東大に対して、1年目から建築を学べる点も魅力です。
著名な出身建築家:村野藤吾、吉阪隆正、菊竹清訓、重村力、富田玲子、内藤廣、吉村靖孝、鈴木了二、古谷誠章、坂口恭平
出身構造家:新谷眞人、早部安弘、徳渕正毅
京都大学 建築学科
京都大学は意匠設計に強く、東大に次ぐ実力校として知られます。
竹山聖、平田晃久らの現役教授をはじめ、歴代には内井昭蔵、高松伸なども名を連ねてきました。
大学の気風としては自由で、学生の自主性を重んじるスタイルが特徴です。
近年では、大西麻貴・百田有希などの活躍も注目されています(大学院は東大)。
国際的な受賞歴を持つ卒業生は少ないものの、実力派の設計者を多数輩出しています。
著名な出身建築家:魚沼繁紀、鈴木隆之、岸和郎、高松伸、黒川紀章、平田晃久、西山夘三、藤井聡
出身構造家:満田衛資、山田憲明、平川恭章、加登美喜子
東京藝術大学
OBには、日建設計の山梨知彦さんのような組織設計事務所で活躍される方もいれば、石上純也さんのようなアーティスト系の建築家もいます。
五大スーパーゼネコンに入社する卒業生はほとんどおらず、個人事務所で経験を積んでから独立するのが一般的です。
最近では、海外の建築事務所で働く学生も多いようです。
この大学出身の建築家: 宮脇檀、吉村順三、坂茂、石上純也、中村竜治、乾久美子、横内敏人、芦原太郎、清家清、六角鬼丈
補足:慶應義塾大学について
建築系の学科はあまり知られていませんが、慶應義塾大学も実力を伸ばしています。
システムデザイン工学科(理工)、総合政策学科、環境情報学科など複数の学部にまたがって建築教育が展開され、妹島和世、隈研吾、坂茂など著名建築家を教員として招いています。
ただし、建築専攻としての一体感は薄く、進路も多様です。
著名な出身建築家:谷口吉生、柄沢祐輔