「意匠系」の建築学生の就職先といえば、以下に分類できるのでは?
- スーパーゼネコン(大成、鹿島、竹中、清水、大林)
- 中小ゼネコン
- 大手組織設計事務所(日建設計、日本設計など)
- スターアーキテクトの事務所
- 大手ハウスメーカー
- その他(広告代理店など異業種転職)
同窓会や風の便りで、それぞれの就職先の長所・短所・給料感などが少しずつ見えてきたので、体験談ベースでまとめてみました。
就活中の建築学生や、転職を考えている建築士の方に少しでも参考になれば嬉しいです。
スターアーキテクト事務所
安藤忠雄、伊東豊雄、隈研吾など、有名建築家の個人事務所です。
「作品性」「独立のための修行場」としての価値は非常に高いですが、働き方はハード。終電近くまでの勤務や週末出勤も当たり前という声もあります。
とはいえ、最近では若手の定着や働き方改革の一環として、スタッフの労働意識やSNSでの発信によって、労働時間を見直す動きも少しずつ見られるようになりました。
「作品主義の建築家になりたい」「名前で勝負したい」という人に向いた環境。一方で、**代表者の高齢化=事務所ブランドの持続性への不安**も現実的な課題です。
スーパーゼネコンの設計部
大成建設、鹿島建設、竹中工務店、清水建設、大林組の設計部門。
給与水準は高く、福利厚生も完備。40代で年収1000万を超えるのも珍しくありません。プロジェクトは大規模で公共性が高く、都市を作っている実感があります。
以前は「デザイン性が弱い」と言われがちでしたが、近年は外資系デザインファーム出身者を採用したり、ファサードやランドスケープに特化した意匠設計部門が強化されているケースもあります。
ただし、主業務は施工なので、設計職の立場が社内で弱めなのは否めません。役員を目指すなら、かなりの実績とマネジメント力が求められます。
日系組織設計事務所
日建設計、日本設計、久米設計、NTTファシリティーズなど。
海外ランキングにも名を連ねる日本型大手設計事務所で、規模や信頼性は抜群。
「スーゼネより設計に専念できる」と感じる人が多く、クリエイティブとロジカルのバランスが絶妙です。現実を見据えた建築がしたい人にはおすすめ。
一方、保守的な雰囲気や、海外勢と比べたときの意匠インパクトの弱さを指摘する声もあり、「世界で通用する建築をやりたい人」には少し物足りないかもしれません。
海外組織設計事務所
Gensler、SOM、HOK、Foster + Partnersなど。
デザイン性と国際性、報酬水準すべてが高く、いわゆる「エリート建築職」のイメージに近いです。最近は多くの会社が香港・上海・シンガポールにアジア拠点を構えており、日本人スタッフも活躍中。
ある友人は香港のオフィスに勤務しており、「夜景が見えるガラス張りオフィス」「出張はビジネスクラス」という夢のような環境。
ただし、英語でのコミュニケーションと報告・提案能力が必須。ポジションの多くは外国人が占めるため、マネジメント職に昇進するには戦略が必要です。
大手ハウスメーカー
積水ハウス、住友林業、ミサワホーム、ヘーベルハウスなど。
かつては「テンプレート住宅の量産」というイメージが強かったですが、近年では「建築家住宅」「注文住宅」などデザイン性の高い案件が増加中。
特に一部メーカーでは、社内で建築家と連携するデザイン部署や、意匠力で差別化を図る部門も誕生しています。
ただし、売上の大半は分譲・企画住宅であり、規模感に限界がある点、転職で組織設計に行くには不利な経歴と見なされる可能性はあります。
「住宅が好き」「ワークライフバランスを大事にしたい」「お客様との直接対応がしたい」人に適したフィールドです。
まとめ
就職先選びのヒントは、自分の「働く軸」がどこにあるかを明確にすることです。
- 作品を作りたい、いつか独立したい: スターアーキテクト事務所
- 高収入・安定志向: スーパーゼネコン、組織設計事務所
- 国際的に活躍したい・外資志向: 海外組織事務所
- 住宅設計にこだわりたい: ハウスメーカー
どこに行っても一長一短はありますが、「自分はどんな建築をつくりたいのか?」という視点だけは、ぶれないでいてほしいなと思います。