ジムなど、エアコンで温度と湿度が完璧にコントロールされた空間では、筋肉が強くなっても、気持ちよくはありませんよね。 そこで今日は、 運動・スポーツ建築のコンセプトと設計手法を事例と共に紹介 していきます。「分かりやすく、すぐ使える」ことを意識して書きました。 課題や卒業設計で体育...
ジムなど、エアコンで温度と湿度が完璧にコントロールされた空間では、筋肉が強くなっても、気持ちよくはありませんよね。
そこで今日は、運動・スポーツ建築のコンセプトと設計手法を事例と共に紹介していきます。「分かりやすく、すぐ使える」ことを意識して書きました。
課題や卒業設計で体育館などを設計する建築学生のみなさんに役立ててもらえばと思います。
コンセプト1:既存建築をリノベしてみる
既存建築を運動施設にリノベーションしてみるのはどうでしょう。運動の「ダイナミックさ」によって、古い建築に新しい命を吹き込むのです。
例えば、Studio Gang設計の「Beloit College Powerhouse」。

発電所を「大学生のための運動とレクレーション施設」にリノベしています。
二棟増築して、ジョギングコース、ジム、プール、サッカーや野球に使える芝生などの活動空間を提供しています。
目玉は、建築全体を貫くジョギングコース!ダイナミックですね↓
もう一例は、waa設計の「The Playscape」。工場を幼稚園にリノベしています。

ビフォーアフターの写真を比べてみましょう。
ビフォー↓

アフター↓

元々あった数棟の建築を、起伏のあるランドスケープとチューブらしきもので繋げていますね。このチューブの中を走れば、屋根の上に登ったり、滑り台ができたりします。
非常に子供心をくすぐりますね。
コンセプト2:身近に運動施設を作ってみる
現代人が運動不足な理由の一つに、「すぐにアクセスできて、しかも安い運動施設が少ないから」でしょう。
そのため、いかに「身近な建築に運動施設を作るか」は面白いテーマになります。
例えば、建築家Neil Denariが提案した「Adidas Sphere」。

住宅とジョギングコースを合体させた建築です。
15階建てのビルに、80戸の住職一体型の住宅とジョギングコースや散歩道が巻きついています↓
コンセプト3:コンペンションセンターと合体させてみる
コンペンションセンター(展示会・会議・セミナー・イベントを開催するための大型施設)って無駄だと思ったことありません?馬鹿でかいのに、いつも使っているわけではない。
それなら、運動施設と合わせてみてはどうでしょう。使わない時は、運動施設にしちゃえばいいのです。
例えば、中国にある「杭州雲棲小鎮会展中心二期」。一年の40%しか稼働していないコンベンションセンターに運動施設を併設しています。
さらに、親しみやすい建築を作るために、1/3を地下に埋め、建物全体の高さを6.6mに抑えています。

そして、屋上にジョギングコース、サッカー場、菜園、砂場、小劇場を始め、様々な活動場所を設けて、市民に開放しています。
同じように埋めたのが、デンマークにある高校「Gammel Hellerup Gymnasium」

建築家ビャルケ・インゲルス(BIG)が、新しい体育館を地面から5メートル下の地下に設計しました。

地上から見たときには、その上が緩やかな丘になっていて、学生たちが座って話したり、昼寝したりできるような中庭的スペースになっているんです。

設計者のインゲルスは、「体育館を学校の外に分けるのではなく、学校の中心につくることで、交流の場をつなげた」と語っています。
つまり、運動する人もしない人も、それぞれのスタイルでその場に関われる、そんな仕掛けが建築にあるわけです。
コンセプト4:柔らかくしきってみる
「学びの空間には、仕切りなんていらない」
そんな思想で設計されたのが、SANAAが手がけたスイスの「ロレックス・ラーニングセンター」です。
この建物、なんとカフェ、教室、自習室、レストランなどが全部ワンルームの中に入っているんです!

でも、「うるさくないの?」って思いますよね?
大丈夫なんです。ここでは壁をほとんど使わずに、起伏のある床や中庭を上手に使って、視線や音をゆるやかに遮っています。


つまり、「完全に分けないけど、邪魔しない」っていう、絶妙なバランスです。
この考え方、運動施設にも応用できそうだと思いませんか?
例えば、ヨガをしている隣でバスケをしていても、起伏や配置で距離感をうまくとることで、お互いの活動を妨げない空間が作れるかもしれません。
「気配は感じるけど、干渉しない」——そんな空間が、スポーツの場にも心地よさをもたらしてくれそうです。