病院建築&リハビリ施設のコンセプトと設計手法!課題や卒業設計に

 
心身ともに弱っているときに行く病院。患者の心も癒せる建築であるべきですよね。実際、病院の環境が嫌いで、逆に病気が重くなる患者さんもいるそうです。

また、病院は、多くの人にとって、死ぬ前に見る最後の光景です。それが、白紙のような無機質な建築だったら、ちょっと悲しいですよね。

そこで今日は、病院はどんな形であるべきかを実例と共に考えてみましょう。

卒業設計や課題で病院、リハビリ施設、介護施設を設計する方に役立てて頂ければと思います。

設計手法1:緑や日光があふれるようにしてみる

緑あふれ、日光で照らされる空間が、人の心身にいい影響を与えることは否めません。

実際、医療技術がそれほど発達していなかった頃は、日光浴も治療法の一つでした。そのため、大きなベランダや窓がある病院もけっこうありました↓


しかし、今は医療技術が発達しているうえ、エアコンで室内環境を心地よく保てるので、逆に建築はどうでもよくなりました。

でも、日光で改善するんだったら、薬を使いたくないのは私だけではないはずです。

緑と日光を入れる簡単な方法が、中庭を作ること↓


例えば、Herzog & de Meuron設計の「バーゼル・リハビリセンター」がこの方法をとっています。

スイスに建つリハビリ施設で、交通事故などで、車椅子生活を強いられている人たちが長期間入院しています。


平面図がこちら↓
中庭によって、ほとんどの病室が緑に接しているのが分かりますね。


上級者テクが、立体的に緑や日光を取り入れる方法。下の「Binh House」の断面図がよくできていると思います。
ベトナムに建つ三世帯住宅ですが、病院にも使えるデザインでしょう。

中庭と屋上緑化を両方作ることで、ほとんどの部屋から緑が見れるようになっています。

詳しい図面はこちらで。


設計手法2:視線をコントロールしてみる

病院のベッドで寝ている患者さんの気持ちになってみてください:通行人とは目が合いたくないけれど、完全に閉ざされるのも嫌ですよね?

そこで、「外から中が見えない開口部」を作ってあげましょう。「そんなものあるの?」とお思いかもしれませんが、下の右図がそうです。
 


もしくは、前田圭介さん設計の「アトリエビスクドール」。個人のアトリエ兼住宅ですが、「壁」が非常に参考になります。


このように、目線の高さにだけ壁があるため、壁が地面から浮いています。
こうすることで、中から外の景色が見えるうえ、非常に軽い建築になりました。


もう一つの方法は、ダブルスキン。外壁を二重に作って、中の環境を一定に保ちながら、外からの視線をブロックする方法です。

例えば、VTN Architects設計の「Ha Long Villa」。ベトナムに建つ民宿です。

こちらが平面図↓壁が二重になっているのが分かりますか?



二枚の壁の間に植物を植えることで、緑豊かな空間にしています。詳しい図面はこちらで。外側の外壁をスクリーンのような透ける素材で作ってもいいでしょう。


設計手法3:病院+αの建築を作ってみる

患者さんは様々な事情を抱えていますので、実は病院に他の機能が必要だったりします。


例えば、「チャイルド・ケモ・ハウス」。小児がん患者が、家族と過ごせる治療施設です。

幼い子供が一人で入院したら、相当不安ですよね。そこで、病室の半分が病院で、もう片方は普通の住宅のように、家族と過ごせます。

こちらのダイアグラムが非常に分かりやすくコンセプトを説明しています↓

こちらが平面図↓

末期患者の方のための治療施設にもよさそうですね。そういう方は、通院に時間をかけるのではなく、家族と過ごすために時間を費やす方が有意義なので。


または、ペットと過ごせる病院もいいかも。最近、少子化の影響もあり、ペットと暮らす方が、高齢者を中心に増えているそうです。

しかし、入院している間は、ぺットの管理費用が大きな負担になったり、「退院して帰ったらペッドが亡くなっていた、、、」なんてことも起きかねません。


いかがででしたか?ちなみに、病院を設計する時、病室に重点を置きがちですが、病院は看護婦さんやお医者さんにとって大事な職場です。

なので、医療従事者の休憩ルームなどの設計も怠らないようにしてくださいね。ではまた。
 
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