みなさんにとって、一番なじみ深い「集合住宅」。その分、新しいコンセプトを見つけるのが難しいですよね。
そこで今日は、ユニークな集合住宅の設計コンセプトと事例を紹介します。
そこで今日は、ユニークな集合住宅の設計コンセプトと事例を紹介します。
課題や卒業設計、コンペで役立ててもらえばと思います。
集合住宅設計前に読んでほしい本
ところで、建築はアートと違って「最低限守るべき規則」があります。オリジナルを設計する前に、この基礎を勉強すると、その後の設計がスムーズに進むのです。しかし、「建築設計資料集成ー住宅」 のようなプロ仕様の本だと、読み終わる頃には、学期末になっているかもしれません(笑)
そこで、オススメなのが「エスキスって何?」。
豊富な図で、建築学生のために、一戸建てと集合住宅の設計に必要な知識をコンパクトにまとめています↓
また、スタディ模型とは何?スケールとは何?など、大学1、2年に必要な設計の知識も学べますので、ぜひ一読を!
コンセプト1. 集合住宅に住みながら、一戸建ての良さを味わえるようにする
集合住宅と一戸建ての良さを両方味わえたら、最高だと思いません?このコンセプトを使ったのが、BIG設計の「8 House」。
集合住宅ですが、スロープで各戸にアクセスできるので、「自転車に乗ったまま自宅に入る」など、一風変わった居住体験ができます↓
なのに、映画館、ラウンジ、ショップなどが住民で共有されていて、超豪華!まさに集合住宅と一戸建ての良さを持ち合わせているわけです。
「8 House」の住民の日常生活を知りたい方は、ドキュメンタリー「The Infinite Happiness」をご覧ください。入居者の実生活を記録した貴重な映像です。
コンセプト2.共有空間の中にプライベート空間を作ってみる
都会の住宅って、プライバシーを重視するあまり、お隣さんでも疎遠ですよね。
しかし、これは理想的だとは言えません。実際、「老人の孤独死」も問題になっていますし、子供の教育的にも微妙です。
そこで、集合住宅の共有部分に、プライベート空間を作ってみてはどうでしょう。「生活が共有部分にあふれ出す」と表現したりします。
例えば、 西澤立衛氏設計の「森山邸」。数棟に分かれているのですが、棟の間に庭を設計して、その庭が部屋の一部のように使われることを考えています↓
もう一例は、デンマークにある集合住宅「Ørsted Gardens」。外廊下に三角形の私有空間を作っています↓
例えば、 西澤立衛氏設計の「森山邸」。数棟に分かれているのですが、棟の間に庭を設計して、その庭が部屋の一部のように使われることを考えています↓
もう一例は、デンマークにある集合住宅「Ørsted Gardens」。外廊下に三角形の私有空間を作っています↓
平面図の緑の部分です:
コンセプト3:外国人のための住宅を作ってみる
少子高齢化によって、これからも日本は外国人が増えるでしょう。そこで、「多国籍、多文化の人が集まって住むには、どんな住宅が適しているのか」を考えるのです。参考になるのが、「神奈川大学新国際学生寮」。
特徴は、4層吹き抜けの中に配置された、「ポット」と呼ばれる小さな共有空間。一つ10㎡しかありませんが、これらのポットで住民がミーティングしたり、料理したりすることで、多文化の交流を目指しています。
コンセプト4. 違う機能と合わせてみる
住宅以外の機能を足し合わせて、もっとよい住宅を作る方法。1+1=3の住宅を作るのです。例えば、BIG設計の「Mountain」は、住宅と駐車場を足しあわせています↓
駐車場で山のような地形を作ってから、その上に段々状に住宅を作ることで、全戸が「庭付きのペントハウス」の形になりました。
もう一例は、MVRDV設計の「Markthal」。市場と住宅を合わせた建築で、1階が市場で、2階から11階が住宅になっています。
住宅が市場の屋根になり、逆に住宅からは市場の賑わいが味わえるわけです。
個人的には、マンションのすぐ下で果物、野菜、お惣菜が買えるのは夢のような生活です(笑)。
コンセプト5.住民が建設に参加できるようにしてみる
家は「パーソナルなもの」だから、住民も建設や設計に参加すべきですよね。例えば、アレハンドロ・アラヴェナ設計の「ハーフハウス」。チリの低所得者向けの社会住宅です。
社会住宅とは、国が税金で建てた、無料もしくは非常に安い価格で住める家のことですが、この建築では、国が家の半分だけを建設して、残りの半分は骨組みだけ作って、入居後に住民が自分たちで中身を建設できるようになっています。
入居前↓
入居後↓
これで、通常の社会住宅の予算では40平米にしか住めなかった人たちが、自分も建設に参加することで、80平米に住めるようになったのです。
政府だけが出資する場合と比べて、入居者はより広く、より自分に合った住宅に住むことができるようになったわけです。