美術館って、建築設計のテーマとして人気ですよね。建築学科の課題や卒業設計で、一度は設計することになるのでは?
そこで今日は、真似しやすく、実際に建設された美術館の事例を紹介します。
卒業設計や学校の課題で役立てていただければと思います。
美術館設計のポイント
と、その前に、美術館設計のポイントを紹介します。よっぽどのことがない限り、守るべき規則です。
これらのポイントに気をつけると、高得点につながりやすいですよ。
a. 美術館は、物を保存する場所なので、敷地の保存もとても重要です。バナキュラーな建材を使ったり、既存建築とスケールや立面を一致させましょう。
b. 導線は分かりやすく、空間は変化に富んているようにしましょう。空間の質(スケール、形状、明暗など)が違う展示室があるとポイントが高いです。
コンセプト1.建築を地下に埋め、地上を公共空間にしてみる
美術館は直射日光に当たれないので、いっそう建築は地下に埋めて、屋上を市民に開放してみては?そのコンセプトの美術館が、「英国V&A博物館の増築」。
ただ開放するのではなく、「場」を形成する工夫をしています。
ここでは、市民が美術館のトップライトに座ったり、覗き込んだりできるようにしています。
また、入り口では、列柱によって、外部と緩やかにつなげています↓
断面図↓
全てを地下に埋めずに、一部の機能を地上3階建ての建築内に納めています。
敷地が、公共空間が少ない大都市にあったり、重要な景観がある郊外を選びましょう。
コンセプト2. 敷地そのものを展示してみる
歴史的に重要な場所に経つ美術館の場合、敷地の保存も兼ねて、敷地も展示品にしてみませんか?
そこで、BIGは、美術館は完全に地下に埋め、この穴をそのまま中庭にしています。
こうすることで、敷地保存だけでなく、中に入った人が、自らの体で船の大きさを体感することもできちゃいます。
コンセプト3. ボリュームを分割してみる
美術館は面積が大きいので、周りとスケールを合わせるために、分割してから、小さなボリュームを再アレンジして、建築にしたりします。
周りの住宅と同じスケールのボックスを、積み重ねたり、交差させたりしています。
上の階に行くほど、ボックスが小さくなっているため、下の階は大きめ、上の階は小さめな展示室に仕上がりました。
さらに、内部の吹き抜けも、上の階に行くほど小さいので、上下階で光の質が違う展示室に仕上がりました。
また、ボリュームの交差していない部分が、テラスになっているので、テラスに出て都市の景色を堪能することもできます。
コンセプト4.開かれた美術館を作ってみる
美術館は警備が厳重なことが多いですが、アートを日常のものにするために、開かれた美術館を作ってみては?
無料で入れる、「憩いの場」や、公共の通り道を建築内部に通すのです。
SANAA設計の「金沢21世紀美術館」が参考になります。ググればたくさん紹介されているので、ここでは省きますね。
コンセプト5.見る順番をデザインしてみる
美術館は、見る順番も重要です。
自由に好きな展示室を回れるのか、ニューヨークのグッゲンハイム美術館みたいにある順番を辿るのか。
それとも、街の景色を見てからアートを見るのか、迷路みたいに進むのか、明るい展示室→暗い展示室と進むのか、、、、
コンセプト6.中身の展示品を建築の形に反映させてみる
美術館建築に展示されている作品が反映されたら、面白いと思いません?
例えば、隈研吾さん設計の「那珂川町 馬頭広重美術館」。
歌川広重の作品を展示する美術館です。広重の作品に細かい線が多く使われていることから、建築材料も細く加工されています。
または、ダニエル・リベスキン設計の「ベルリン・ユダヤ博物館」。
わざと「鋭角の部屋」と「スリットのように細長い窓」を設計して、迫害されたユダヤ人の不安な心の内を表現しています。
他にも、井戸のように狭く高い空間があったりするなど、細かい工夫がされています。