ネット時代、人とリアルにつながるコミュニティーセンター(公民館)は、社会的に重要な意味を持つようになりました。
今日は、 地域の住民の交流に使える、コミュニティーセンターの設計コンセプトと事例を紹介します。
建築学科の卒業設計や課題、コンペで役立ててもらえばと思います。
コンセプト1. 部屋の大きさを変えられるようにしてみる
普段は小さな部屋で十分だけど、「年に数度だけ、大きなイベントのために大きな部屋が必要」なところもあるでしょう。
その時のためだけに、大きなホールや部屋を作るのはもったいないので、普段は小部屋として使えて、必要な時だけ合併させるのです。
その事例が、SANAA設計の「Junko Fukutake Hall」。
一つの建築に3つのホールが入っていますが、 別々に使ってもいいし、全部合併させて、300席以上の大ホールとして使うこともできます。
また、ただの効率的な建築にならないように、何か、その敷地特有の設計要素を入れた方がいいです。
例えば、「Junko Fukutake Hall」では、屋根を使って周辺建築とつなげています。
周辺の重要な建築の方向には、開口部が大きくなるように、屋根を傾けたり、軒を伸ばして、半屋外空間を作ったりしています。
コンセプト2. 半屋外空間を作ってみる
いきなり知らない建築に入るのは敷居が高いので、まずは、半屋外空間から利用するのが良いのではないでしょうか。
その例が、「東八幡キリスト教会」。
ホームレス支援も行っている教会ですが、軒を設計して、建築の外側にふらっと立ち寄れる空間を作っています。
日本は昔から、軒や縁側で交流する習慣がありますので、分かりやすいと思います。
もう一つ、個人的に好きなのが、「サンクンプラザ」。地上面より一段下がった広場のことです。
「大手町ファーストスクエア サンクンガーデン リニューアルプロジェクト」が有名ですよね。
屋外の講演やパフォーマンススペースとしても使えるように、扇形や台形など、どの方向からも見やすい均等な形にするといいでしょう。
コンセプト3. アクティビティを外から見えるようにしてみる
建築内だけで活動するのではなく、活動が外に溢れ出した方が、親しみやすい建築になりますよね。
一つの方法は、テラスを作ること。
例えば、「tette 須賀川市民交流センター」。積層したフロアをずらして、テラスをたくさん作っています。
図書館、クラフトルーム、クッキングスタジオなどが入っているのですが、このテラスで様々なアクティビティが行われる姿を、町の人に見てもらおう、というのがコンセプトです。
コンセプト4. 部屋の中身を外から見えるようにしてみる
交流は計画して起きるのではなく、結構な割合で偶発的に起こります。
そこで、一個一個の部屋で何が行われているのかを見えるようにするのはどうでしょう?
音楽大学なので、普通は防音のために、牢屋みたいに厚い壁で仕切られています。が、ここは、ガラス壁で部屋を仕切っています。
防音はどうしているのでしょう?部屋の間に廊下を渡すことで防音しているのです↓
もう一例は、千葉学さん設計の「工学院大学125周年記念総合教育棟」。
数棟に分かれているのですが、棟同士をわざと近づけて、他の教室を覗けるようにしています。
これによってできた細い通りも、下町のような良い味を醸し出していますよね。