今日は、小学校建築の設計のテーマ(コンセプト)について、具体的な事例をあげながら紹介していきます。 建築の卒計や課題、 コンペで役立ててもらえばと思います。ちなみに、一つのテーマを重点的に設計してもいいし、2〜3個のテーマを一つの建築内に入れて設計しても良いでしょう。 「教室、職...

小学校建築設計におすすめの設計コンセプトと事例!

 

今日は、小学校建築の設計のテーマ(コンセプト)について、具体的な事例をあげながら紹介していきます。

建築の卒計や課題、 コンペで役立ててもらえばと思います。ちなみに、一つのテーマを重点的に設計してもいいし、2〜3個のテーマを一つの建築内に入れて設計しても良いでしょう。

「教室、職員室が廊下でつながっただけの建築が、小学生の成長に適しているのか?」などを考えながら、ぜひ自分の小学校のイメージは一旦忘れて、自由に発想してみてください。

小学校の設計前に読むべき本

まず、小学校って「守るべき設計の決まり」が結構あったりします。

例えば、「後ろの方で黒板が見えない」なんてことがないように、教室のサイズや縦横比には決まりがありますし、教室の向きにも決まりがあります。


しかし、プロ建築家が読む専門書だと、細かすぎて「肝心の設計に時間があてられなかった」と言う事態に確実になります。

そこで、「コンパクト建築設計資料集成」を手元に一冊置くと良いでしょう。


テーマ1. 教室に多様性を持たせてみる

大人になると、子供の頃の1年って、めちゃくちゃ濃いことに気づきますよね。1年で体格も変わりますし、知識もかなり増えます。

この6年間を、同じ教室で過ごしていいのでしょうか?

例えば、工藤和美+堀場弘さん設計の「山鹿市立山鹿小学校」では、小学校低学年は、一軒家のような平屋の校舎です。


一方、小学校高学年棟は、普通の学校と似た3階建ての建物です。
確かに、小学校に入ったばかりの子は、家と似た環境の方が落ち着きますよね。

ちなみに、低学年棟と高学年棟の間に、水場や学年で集まれる広場が設計され、そこで野外学習もできるようにしています。



テーマ2. 学校の施設を地域の住民も利用できるようにしてみる

少子化の時代。児童数が減った後、学校の施設を地域が公共施設として活用できたらいいですよね。

その例が、先ほども紹介した、工藤和美+堀場弘さん設計の「山鹿市立山鹿小学校」。

「コミュニティ・スクール」と呼ばれる学校で、体育館、図書館等を1カ所に集めて、将来、地域の住民が利用しやすいようにしています。

また、この小学校では、「千人灯籠」と言うお祭りが毎年行われるのですが、そのために、1本の大通りを正門からグラウンドまで通しています↓
子供の頃から地域と接点が持てると、子供も社交的になりやすいでしょう。

自分の敷地にそういうイベントがあるかリサーチして、小学校で開催できるようにすると良いと思います。


テーマ3.実習を身近なものにしてみる

本当に身に付くのって学校の教科書の内容ではなく、実際に体験したことですよね。

そこで、教室のすぐ横に実習空間を作ってみてはどうでしょう?

例えば、小学校は、大きなグラウンドが1つあるのが普通ですが、それを数個に分けて、教室のすぐ横に配置するのです。


例えば、studio velocity設計の「愛知産業大学言語・情報共育センター」。(建築の参考事例は、機能が同じでなくてもいいのです)

教室と中庭が編み物のように交差しているため、教室のすぐ横に外部空間ができます。

広い庭でドッジボールをしたり、小さめの庭で小動物やお花を育てたりして、しかもそれが他の教室から見れたら、クラス同士の交流も深まりそうですよね。

社会に出たら、必ず他の年齢の方とも付き合いをするので、小中学校や高校、で学年がはっきり分かれているのは、逆に不自然かもしれません。

「大きなグラウンドがなくて、大丈夫?」と思うかもしれませんが、私は、弱小私立小学校出身で、グラウンドは公立の1/4位の面積しかありませんでした。が、ちゃんと育ちました。たぶん(笑)



テーマ4.グループ学習向きの空間を作ってみる

社会に出ると、人脈の重要性に気付かされますよね。学校でほとんど学ばないのが不思議なくらいです。

それには、グループ作業が不可欠なのですが、生徒同士が気軽に意見を出し合える雰囲気を作るために、「廊下」を設計した建築がけっこうあります:

例えば、乾久美子さん設計の「釜石市立唐丹小学校・釜石市立唐丹中学校」では、

教室と廊下の間に、グループで勉強できる空間を作っています。

もう一例は、シーラカンス設計の「宇土市立宇土小学校」。教室をL字の壁だけで仕切っています。

そのため、教室と廊下がきっちり分かれた教室ではなく、緩やかにつながる小学校にしあがりました。


この結果、「遊び」と「学び」の中間領域がたくさんできたのです。

 
Copyright ©